ゴールデンレトリバー

前回の記事で、しつけを始める前の犬との主従関係の築き方はご理解いただけたと思います。

今回はいよいよ、しつけの第一段階である「犬とのアイコンタクト」です。

アイコンタクトは、犬との大切なコミュニケーション手段であり、これから様々なしつけを行っていくうえで欠かせない要素となりますので、ここで手を抜かずに行っていただきたいと思います。

なぜアイコンタクトは犬のしつけの基本なのか

アイコンタクトは犬のしつけの基本だといわれますが、なぜ重要と言われているかご存じですか?

実は、このアイコンタクトこそ飼い主と犬の信頼関係を測るバロメーターの一つだからです。

時々、誤解しておられる飼い主さんもおられるのですが、例えば飼い主が犬の名前を呼んだ場合、単に犬と目が合っただけでは本当のアイコンタクトが成立しているとまでは言えないのです。

しつけで言うアイコンタクトというのは、犬が飼い主である人間に注目し、飼い主の命令(コマンド)を聞き入れる準備をさせるという意味も含まれるのです。

アイコンタクトが取れている状態の犬とは、他のことを考えずに飼い主だけに注視している状態を指します。

これが、アイコンタクトができないとそもそもしつけを始めることが出来ない、といわれるゆえんです。

(アイコンタクトが取れることによるメリット)h4

アイコンタクトが取れていると、犬にも飼い主にもいろいろとメリットがあります。

犬がどんな状態にあったとしても、飼い主が名前を呼べばすぐに飼い主に注目する状況を作っておくと、犬はそれまでの自分の行動がリセットされ正されます。

これは、実生活にも大変役に立ちます。

主要な例を3つあげてみましょう。

  • 散歩中、横断歩道の信号が赤なのに渡ろうとしている犬を呼び止められる。
  • 他の犬に気を取られて興奮状態の犬を落ち着かすことができる。
  • これから行っていくしつけがやりやすくなる。

などのメリットがあります。

アイコンタクトが確立されると、犬を危険から守ることも出来るなど、飼い主のみならず犬にとってもメリットが多いのです。

アイコンタクト習得のための5つのステップ

散歩中のアイコンタクト

犬にアイコンタクトを教えるのにはいくつかの方法があるのですが、ここでは家の中でもできる一番簡単な方法を解説したいと思います。

アイコンタクトを教える前のちょっとした前提条件

アイコンタクトを成功さすための前提条件として、子犬を始めて家に招き入れる時は特にそうなのですが、まずは飼い主のつけた名前を犬に覚えてもらうことが重要になります。

例えば、あなたが新しく犬を飼い、名前を「シロ」と名付けたと仮定します。

名前を付けたばかりの最初のころは、犬は自分の名前を「シロ」だとは認識できていないわけです。

この状態でアイコンタクトを取ろうとしても、犬は自分のことを呼ばれていることがわからないため混乱してしまいます。

そこで、ご飯を与える時であるとか、散歩に出かける時、おやつを与える時、など、犬が嬉しい、あるいは楽しいと感じているときに「シロ、散歩に行くよー」とか「シロ、ご飯だよー」とか名前を付けて語りかけてあげてください。

犬としても、気分のいい時に名前付きで呼び掛けられると、自分の名前は「シロ」であると認識してくれるようになります。

飼い主さんによっては「シロ、シロ、シロ」と何回も名前を連呼する人がいますが、これでは犬としても自分の名前が「シロ」なのか「シロシロシロ」なのかわからなくなってしまう可能性がありますので、犬の名前を呼ぶときはいつも一回だけにしてください。

犬はとても耳の良い生物なので、あなたが飼い主であると認識していれば一回名前を呼べば反応してくれるはずです。

他には、家族で犬を飼っている場合など、個人個人によって犬の呼び方が違う場合がありますが、これも犬を混乱させる一因なので、犬の名前は完全に統一した方がいいでしょう。

アイコンタクト訓練のための5つのステップ

それではいよいよ実践です。

まず犬の好きなおやつ(ドッグフードでOK)を一つ手にもって用意してください。

それでは始めます。

アイコンタクトの教え方
  1. おやつを1粒手に持つ
  2. 犬におやつの匂いをかがせて興味を引かせる
  3. 犬があなたの手に注目をしている時に、手を犬の目とあなたの鼻の頭あたりにもっていき、目の間に合わせる
  4. 犬の名前を呼びながら、あなたと目があった時におやつをあげる
  5. アイコンタクトができたら犬を褒める

たったこれだけで、アイコンタクトの初級は完了です。

ここでのポイントは、おやつではなく、あなたの目と犬の目が完全に合うことと、アイコンタクトが出来たら犬を最大限褒めてあげることです。

犬は飼い主に褒められると嬉しくなり、より飼い主の声に敏感に反応しやすくなるからです。

最初から上手く出来なくてもまったく無問題です。

また、犬の集中力はせいぜい10分が限度だと言われています。

あまりだらだらと続けるのではなく、普段の犬との遊びの一環として、楽しみながら気長に続けましょう。

アイコンタクトを教える時の注意点

アイコンタクトを教える時は注意するべき点が2つだけあります。

まず1つ目は、飼い主の方から犬に視線を合わせようとしてのぞき込んだりしないということです。

犬の社会では、犬同士がお互いに目線を合わすのは相手の犬に敵意を表すという意味にもなり得るからです。

犬の方から自主的に飼い主に目線を合わせてくれるまで何度も諦めずに続けましょう。

万一、犬と視線を合わせてしまって、犬が唸り声をあげたり怒ってくる場合は、まだ飼い主を敵だと思っているか、信用していないと思われるので、もう一度最初から、飼い主は敵ではないから大丈夫、ということを愛情をもって教えるところから始めましょう。

2つ目は、アイコンタクトが上手く出来なくても犬の名前を呼びながら怒ってはいけないという点です。

犬は飼い主の感情の変化に敏感です。

犬の名前を呼びながら怒ってしまうと、犬からすれば飼い主が何に対して怒っているのか理解出来ないまま、自分の名前を呼びながら怒っている飼い主を見て「名前が呼ばれると悪いことが起こる」と間違った情報を与えてしまいかねません。

これでは、今までせっかく築き上げた信頼関係が崩壊してしまい、名前を呼んでも反応してくれなくなる恐れがあります。

アイコンタクトも最初は上手く出来なくて当然なので、それが出来ないからといってあまりむきになって怒ったりせず、さっきも言いましたが遊びの延長と考えて気長に繰り返していただきたいと思います。

アイコンタクトの応用

アイコンタクトの初級が出来るようになれば、次はその応用です。

応用編では、もっと様々なシチュエーションでアイコンタクトを取れるように教え込んでいきます。

例えば、散歩中に犬が別のものに気を取られているときでも飼い主が呼べばアイコンタクトを取れる状態にしていくのです。

静かな室内と違って、外には様々な音があふれています。

音以外にも他の犬に気を取られる場合も多いでしょう。

そういった犬にとっての外刺激が多い場所でも、あなたが犬の名前を一言呼べばいつでも自分の目を見る状態になるのが理想です。

最初は公園などの静かな場所から始めて、徐々に騒がしい場所にも慣らしてきましょう。

コツとしては飼い主が、いかにも「今からアイコンタクトを始めるよ」という素振りを犬に見せないようにしましょう。

犬が飼い主に注目していない時、突然犬の名前を呼んで振り向かせるのが一番いい方法です。

騒がしい場所であっても、犬があなたに注視して、部屋でやったようにアイコンタクトが完璧に取れるようになれば完璧です。

犬へのご褒美は徐々に減らそう

アイコンタクトの練習では、上手く出来た場合、犬へのご褒美として「おやつ」を与えましたね。

犬からすれば、飼い主が「自分の名前」を呼んで上手く飼い主との間でアイコンタクトが取れれば、そのご褒美として「おやつ」がもらえると覚えるようになります。

「自分の名前」イコール「おやつ」という図式が犬の脳内で回路として形成されるわけです。

これを「条件付け」といいます。

でも、この方法ではとっさの場合だと飼い主がすぐにおやつを用意することが出来ませんし、そもそも、これでは飼い主が常におやつを持ち運ばなければならないことになってしまいます。

これではちょっと困りものですよね。

そこで、アイコンタクトが上手く出来てくるようになれば、今度はおやつを与える回数を徐々に減らしていきましょう。

最初は毎回与えていたおやつを2回に1回に減らし、今度は3回に1回に、さらには4回に1回に減らすといった具合です。

おやつを与えない回では、おやつの代わりに思いっきり犬を褒めてあげてください。

少し大げさな褒め方ぐらいがちょうどいいでしょう。

犬からすれば「自分の名前を呼ばれたら、おやつをもらえるか褒めてもらえるかのどちらかだ」「本当はおやつの方がいいけど、もらえても、もらえなくても悪いことは起こらないから振り向こう」と、先ほどの条件付けが上書きされていきます。

以上、ここまでくれば犬とのアイコンタクトは完璧です。

何度も言いますが、一度に覚えられなくて当然ですので、遊び感覚で、気長に、犬と一緒に楽しむつもりで教え込んでいっていただきたいと思います。